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土方邦男のコラム
  近時の不況の影響で、中小の会社の中には経営不振で苦しんでいる企業が少なからずあります。自分の経営する会社が経営不振から脱却できない場合、経営者としてはどのように対処すべきでしょうか。

私の経験した或る事例を参考に、経営者の対処方法を考えてみましょう。

A株式会社は、従業員40名程の繊維商社です。創業50年の伝統を誇り、自社ビルも2棟保有していましたが、長年の不況の影響で、近年は赤字続き。とうとう繰越欠損金も1億円を超えてしまいました。社長さんは、これ以上経営を続けると毎年1億円の赤字が発生するので事業を閉鎖したいのだけれど、今事業を閉鎖すれば、従業員は路頭に迷うし、取引先からも苦情が出るので廃業するに廃業できないと悩んでおりました。

A社の社長さんの相談に対する私のアドバイスは以下のものでした。
(i) 第一に、事業の将来の見通しが黒字転換できるのか、赤字から脱却できないのかの見通しをつけるべきこと。若し、赤字からの脱却が無理であれば廃業すべきであること。
(これに対するA社の社長さんの意見は、事業を継続したら来期も1億円の赤字だろうということでした。)
(ii) 第二に、廃業するのなら今すぐ廃業すべきであること。何故なら、赤字をたれ流せば、それだけ返済できない債務が多くなり、取引先にも銀行にも余計に迷惑をかけるからです。

A社の社長さん、早速に廃業を決断し、1ヶ月後には会社を解散してしまいました。幸い会社は自社ビルを2棟保有していたので、自社ビルを売却することにより債務を完済することができ、社長さんも退職金を受け取ることができました。同じ立場の同業他社は、従業員や取引先への遠慮からズルズルと事業を続け、最後は破産に追い込まれ無一文となってしまったそうです。A社の社長さんは、同業他社の社長さんから、「お前は旨く早いとこ逃げたなぁ」と羨望のような嫌味のようなことを言われたと述懐しておられました。

B株式会社は、創業10年の出版会社。経営は順調で毎期黒字を計上していました。ところが突然、大口売掛先が倒産してしまい、資金繰りに窮してしまいました。B社は毎期黒字は出していたものの、創業から10年と若い会社だったので、これといって資産は有しておらず、連鎖倒産すれば、負債を全く払えないことは目に見えておりました。

私のB社の社長さんに対するアドバイスは以下のものでした。

(i) 第一に、事業の黒字は、時期以降も確保できるのか、それとも今月の支払不能による信用低下により時期以降は赤字に転落するのか、はっきり見通しをつけること。
(B社の社長さんの見通しは、B社には専門書についてのノウハウの蓄積があり、それに注目したスポンサーも現れたので、次期以降も黒字を確保できるというものでした。)
(ii) 第二に、次期以降、黒字を確保できるのであれば、民事再生の申立をなすべきであること。

B社の社長さんは、私のアドバイスに従って、早速民事再生の申立をなしました。ちなみに、民事再生の申立後は、社長さんは、申立人代理人弁護士と一緒に大口債権者を回り、「申立に至った事情」や、「破産よりは民事再生の方が債権者の配当率が高いこと」を説明し、その結果B社は賛成多数で民事再生が決定されました。

皆さん、A社とB社の事例を御覧になって、廃業か事業継続かの分岐点は何処に在るとお考えでしょうか。
勿論、その判断の分岐点は、事業が今後黒字を維持できるか否かの判断に在ります。負債の大きさ、資産の大小は問題ではなく、事業の収益性の有無が、廃業か事業継続かの分岐点となるのです。


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